乗馬初心者の拍車の必要性・初心者には拍車は要る?要らない?

乗馬コラム

乗馬クラブである程度レッスンに慣れてきた頃、馬を思ったように動かせず悩んでいるとインストラクターから「拍車を着けてみませんか?」と提案されたことはありませんか

そもそも拍車ってどういう道具?


西部劇で見るカウボーイのかかとについているギザギザのものを想像したり、見た感じ、馬が痛そうでかわいそうじゃない?と思われる方もおられるかもしれません。しかし、拍車は決して馬を罰するための道具ではありません。

拍車は正しく使えば自分の扶助の手助けとして大きな効果を発揮する道具です。

ふだんからよく聞く「拍車をかける」という慣用句は馬の拍車のことを指しており、この道具の使用目的のとおり「一気に物事をすすめる」という意味合いがあります。
この記事では拍車を使用する意味や、初心者が拍車を扱う上で気を付けておくべき注意点などをまとめてご紹介します。

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拍車とは

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拍車(英:Spur)は、騎乗者の履くブーツのかかとに取り付ける金具のこと
乗馬では、手綱を操作する「手」や体重移動を行う「座骨」と並んで、脚(きゃく)を使った指示、すなわち主扶助である脚扶助(きゃくふじょ)」が馬を動かすための主要なコミュニケーション手段となります。拍車は、この脚扶助を補助し、より明確で繊細な指示を馬に伝えるために使用される「副扶助道具」に分類されます。先端に突起や円盤がついており、それを必要に応じて馬の腹部に圧迫し刺激を与えることによって、馬の制御を手助けします。

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拍車の種類

拍車には、その形状によって大きく分けて「棒拍(ぼうばく)」「輪拍(りんぱく)」の2種類があります。一般的に、ブリティッシュスタイルの乗馬では棒拍が、ウェスタンスタイルの乗馬では輪拍が使用されることが多いです。

種類形状の特徴主な用途・特徴
棒拍 (Knob/Post Spur)金具の先端が棒状になっている。先端は丸いもの、平たいものなど様々。ブリティッシュ馬術で最も一般的に使用される。棒の長さや角度によって刺激の強さを調整できるため、初心者から上級者まで幅広く使われる。
輪拍 (Rowel Spur)先端に回転する円盤(歯車)が付いている。歯車の形状は様々。ウェスタン馬術で主に使用される。歯車が回転することで、一点に強い圧力がかかり続けるのを防ぎ、馬の皮膚を傷つけにくい構造になっている。

 

馬への刺激・扶助の強度(強い刺激)としては【輪拍 > 棒拍】となります。

輪拍はかかとの先端についた突起が回転する円盤状になっているのが特徴です。

西部劇のカウボーイが着けているギザギザはこちらの輪拍のことですね。実際ウエスタン競技でも使用されています。 あのようなギザギザがついているものとついていないもの、先端が平らなものやボール状になっているものなどさまざまな形があります。
ギザギザや円盤がついていて痛くないの?と思われるかもしれません。たしかに先端がとがっている分馬への扶助の強度は高いですが、馬のお腹にあたる部分が回転することで衝撃が分散され、馬に傷をつくらないように工夫されているのです。

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棒拍は金具の先端が名前の通り棒状になっており、突起が角ばったもの、球状になっているものがあります。

一般的には、
棒の先端が丸くなっているほうが馬のお腹への刺激が優しく扶助の強度がマイルドになります。

棒拍(ぼうばく)の詳細

初心者やブリティッシュ馬術で主に使用される棒拍は、さらに**「長さ」と「角度」**によって、馬に与える刺激の強さを細かく調整することができます。

  • 棒の長さ
    • 短いタイプ(15mm~25mm): 刺激がマイルドで、意図せず馬の腹に触れてしまうリスクが少ないため、拍車の扱いに慣れていない初心者におすすめです。
    • 長いタイプ(30mm~40mm): 脚を少し動かすだけで馬に指示が伝わるため、より繊細な扶助が可能になります。ただし、刺激が強くなるため、脚の位置が安定した中級者以上や、反応が鈍い馬に対して限定的に使用されることが多いです。
  • 棒の角度
    • 下向きの角度: 角度が下を向いているほど、騎乗者の脚が自然な位置にある状態では馬体に当たりにくく、刺激がよりマイルドになります。
    • 水平の角度: わずかな脚の動きでも馬体に触れやすくなり、よりシャープな指示を出すことが可能です。

棒拍の角度としては、棒がやや下が向いているものが一般的です。
角度がより下を向いているほど馬への刺激が少なくなります。
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初心者の拍車のメリットとデメリット

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乗馬クラブでは安全のためにも、初心者のうちは重い馬、つまり反応の鈍いおとなしい馬をあてがう場合がほとんどです。そのため脚を入れてもなかなか馬が発進しない、速歩がでないといった問題がよく起こります。
指導者が初心者に拍車を勧めるのはこういった事情も理由の一つでしょう。

初心者が重い馬に拍車をつかうメリットはありますが、当然その裏にはいくつかのデメリットも存在することを知っておきましょう。

【初心者が拍車を使用するメリット】
拍車を使う最大のメリットは、脚扶助の精度が格段に上がることです。今まで脚をいくら使っても伝わらなかった指示が、拍車によって明確になり、驚くほど軽い力で馬が反応してくれるようになります。これにより、ライダーは「馬が動く」という成功体験を得られ、レッスンを効率的に進めることができます。
【初心者が拍車を使用することによるデメリット】
一方で、最も注意すべきデメリットは、脚の位置が定まっていない初心者が無意識に拍車を使い続けてしまうリスクです。馬の腹に常に拍車がチクチクと当たり続けると、馬はそれを不快に感じ、脚の指示そのものに無反応(鈍感)になってしまったり、逆に嫌がって暴走したりする危険性があります。 また、拍車の力に頼るあまり、本来習得すべき正しい脚の位置や使い方(主扶助)の練習が疎かになってしまう「本末転倒」な事態に陥ることも少なくありません。

指示をしてもいっこうに反応のない馬に振り回されてしまい、レッスンのほとんどを四苦八苦で終わらせてしまうのはせっかくの時間ももったいないですし、金銭的にもかなり痛いですよね。
拍車を使えば重たい馬にもしっかり扶助が伝わり、いままでの苦労はいったい何だったんだ・・?と思ってしまうくらい軽く走り出してくれるようになります

でもちょっと待って!
少し立ち止まって考えてほしいのは、なぜその動いてくれなかった馬はいとも簡単に走り出すようになったのか?ということです。それは、拍車という道具がとても威力の強い道具だからです。

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自分の力や姿勢をコントロールできていなければ、無意識のうちに不必要な強い指示を馬に与え続けてしまうことになり、暴走させてしまう危険性もあるのです。
正しく脚を使えていなくても馬が動いてくれるため、本来先に練習しておくべき脚の主扶助をおろそかにしてしまいその後の上達のスピードが鈍ってしまうということも。
また、誤った使い方を繰り返すと、馬のお腹の拍車が当たる部分に「拍車傷」とよばれる怪我を負わせてしまうことがあるので十分に注意しましょう。

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拍車の選び方と注意点

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拍車を正しく使用するためには、今の自分にあったものをよく考えて選ぶことが大切です。

チェックするうえでの主なポイントは、
・自分の体格に合っているか?
・乗る馬の性質に合っているか?
・そもそも今の自分に拍車は必要なのか?

騎乗者の体格や脚の長さによって、馬のお腹にあたる拍車の位置はかなり変わってきます。拍車の角度や長さを調節することで馬に与える刺激の大きさをコントロールすることが出来ますので、指導者や経験者とよく相談しながら選ぶとよいでしょう。

乗る馬によっても拍車に対する反応はそれぞれ千差万別です。こちらはタイプや長さの違う拍車をいくつか用意し、実際に騎乗して試してみることで解決できます。 馬にも無理をさせず、こちらも使いやすい拍車を選べると一番良いですよね。

乗馬をするうえで一番危険なのが、馬のコントロールができなくなってしまうことです。

馬は繊細な気質を持ち、加えて非常に身体の大きい生き物なので、一度制御ができなくなると大きな事故を起こしてしまうこともあります。
拍車を使ううえで、正しく脚扶助が使えているか? 間違えて拍車が当たらないように姿勢を保てるか?など、自分の技術面をいちど改めて確認することも大切です。

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まとめ

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拍車は、正しく使えば、騎乗者の繊細な意思を馬に伝え、より高度なパフォーマンスを引き出すための重要なコミュニケーションツールです。しかし、その一方で、使い方を誤れば馬を傷つけ、危険な状況を招きかねない「諸刃の剣」でもあります。

大切なのは、拍車を「脚扶助の最終手段」や「便利な飛び道具」と考えるのではなく、「脚扶助の精度を高めるための補助具」として正しく位置づけることです。

道具の性能に頼る前に、まずは自分の技術と向き合うこと。そして、なぜその道具が必要なのかを深く理解すること。このプロセスこそが、安全で楽しい乗馬ライフと、真の上達への鍵となります。今の自分に最適な拍車を選び、正しく使えるようになれば、それは

拍車とはどういった道具で、どういう場合に使うべきなのか?
ということを、拍車を使う前にまずしっかり理解しておくことが非常に大切です。

拍車に限らず、どんな道具も使う人次第。
学び方、使い方によってできることは大きく変わります。
今の自分に必要な拍車を選んで使えるようになれば、今後の乗馬の上達を助けてくれる頼もしい味方になってくれますよ。

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